
宗教
篠原- 今回の運慶展では、興福寺さんのお像もたくさん拝観できるということなんですけれども、こちらも楽しみです。
多川- そうですね。四天王が2組、康慶のものと、ひょっとしたら北円堂にあったものではないのかと考えられている四天王、無著・世親像、それから運慶の息子・康弁らがつくった天燈鬼・龍燈鬼ってあるでしょ。
康慶作 鎌倉時代・文治5年(1189)/奈良・興福寺蔵
鎌倉時代・13世紀/奈良・興福寺蔵(南円堂安置)/写真:飛鳥園
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龍燈鬼立像:康弁作
鎌倉時代・建保3年(1215)/奈良・興福寺蔵/写真:六田知弘
篠原- 大好きです! かわいらしいですよね。なんだか、アニメのキャラクターみたいで(笑)この子たちがやってくるんですね。
多川- 運慶が手がけた仏像は、そんな何百体もなくてね、だいたい30体ぐらいだと言われてますけど。やはり運慶を理解するには、父の康慶、それから子ども、弟子、彼らの作品を合わせて見ることで、より運慶らしさが自ずから伝わってくるんじゃないでしょうか。
篠原- 運慶のルーツを知ることができるというのも、運慶展の一つの楽しみですね。
多川- 運慶の仏像と康慶の仏像と、見比べてみるとかね。
右:重要文化財 四天王立像 康慶作/鎌倉時代・文治5年(1189)/奈良・興福寺蔵
篠原- 見比べられるのも、すごく贅沢な空間ですよね。思わず、手を合わせてしまいます。一方で、お像を外に貸し出すということは、お寺にとっては大変なことではないでしょうか。
多川- もちろんお像は移動させないのがベストですけれどもね。だけど、展示会場でより多くの方にご覧いただき、運慶仏の精神性の深さに触れていただく。それは一種の社会貢献になりますしね。それに近年は、仏像を運ぶ技術も相当に優秀ですから。問題ないと思いますよ。
篠原- 信頼して送り出す、ということなんですね。興福寺といえば、阿修羅像が東京にやって来たときもすごく話題になりました。運慶の仏像を私たちが見させていただくことで、なにか大きなうねりが始まりそうですね。
多川- そうですね。だから、見る立場である我々が、仏像の精神性の深さにどう感受性を開き、それに反応するかどうかですね。一人ひとりが試されているということもあるんじゃないでしょうか。
篠原- そうですよね。なんだか私、仏像を見ると鏡映しになっているような気持ちがあって。自分の悩みが浮き彫りになってくる感じもすごくするんです。
多川- それはとてもいい見方ですね。仏像は、私たちにとっては拝む対象ですけれど、一般的には仏教美術として運慶展があるわけです。そうすると一般の方たちは仏像を「見る」とおっしゃいますよね。だけど実際には「見られている」わけです。仏像の眼、視線を受けて、仏像に、仏様に見られているという感覚も、当然わいてくるわけです。
篠原- 今回私たちは、運慶の仏像たちに見られる側にもなるということですね!
多川- そうです。それから、さっきおっしゃったように、鏡でもありますよね。だから、お像の前に立っている自分の心のありようで、見え方も違ってくるんじゃないでしょうか。
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篠原- そして興福寺といえば、再建事業が進んでいますね。
多川- おかげさまで多くの方に参加していただいて、本体はほとんどできあがり、あとは付帯工事だけですね。ただこの事業は、四半世紀前から進めておりまして、中金堂が終わればそれで終わりではなくて、「天平回帰」と私たちは呼んでいるんですけども、その天平回帰をずっとこれからも続けていくという考えです。
篠原- ちょうど興福寺さんに仏像拝観に行ったときに、瓦寄進をしていたので、筆で絵を描いて寄進をさせていただきました。
多川- ありがとうございます。なんと書いたんですか。
篠原- 自分の欲で願い事をあまり書かないので、この興福寺の再建がずっと後世に残っていくように「夢」と一言だけ書きました。
多川- それはそれは!
篠原- イラストも描いたんですよ。そしたら、別の日に興福寺さんに行ったら飾られていて、うれしくなっちゃいました。でも、この再建の瞬間に私たちが立ち会えるというのは、すごくラッキーなことだと思うんですね。この時代に生きていることがご縁だなと感じます。
多川- 来年の10月7日から11日までの5日間には、落慶法要を行います。屋根の上の鴟尾も除幕して、きらきらっと光りますよ。散華もありますしね。ぜひいらしてください。
篠原- 華やかになりそうですね! たくさんのお像を送り出していただいたので、私たちも興福寺に行って、ありがとうのお礼を込めて、改めて手を合わさせていただきたいと思います。すてきなお話をありがとうございました。
Our Classes運慶学園の授業
美術
全3回みうらじゅん先生
すごいぞ、運慶
『見仏記』でおなじみのみうらじゅんさんが縦横無尽に運慶について語る美術講座。
歴史
浅見 龍介先生
和田 彩花さん
鎌倉彫刻史と運慶
学園生徒・和田彩花さんが東京国立博物館研究員の浅見龍介氏に話を聞きます。
宗教
興福寺貫首
篠原 ともえさん
僧侶・運慶
学園生徒・篠原ともえさんが多川俊映興福寺貫首に話を聞きます。
体育
石井 直方先生
天燈鬼・龍燈鬼の筋肉を科学する
運動生理学が専門の石井直方先生が、天燈鬼・龍燈鬼立像の筋肉について解説します。
